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いい子のあくび/高瀬 隼子

 

【あらすじ】芥川賞受賞第一作。公私共にわたしは「いい子」。人よりもすこし先に気づくタイプ。わざとやってるんじゃなくて、いいことも、にこにこしちゃうのも、しちゃうから、しちゃうだけ。でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人をよけてあげ続けるのは、なぜいつもわたしだけ?「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作(「いい子のあくび」)。
郷里の友人が結婚することになったので式に出て欲しいという。祝福したい気持ちは本当だけど、わたしは結婚式が嫌いだ。バージンロードを父親の腕に手を添えて歩き、その先に待つ新郎に引き渡される新婦の姿を見て「物」みたいだと思ったから。「じんしんばいばい」と感じたから。友人には欠席の真意を伝えられずにいて……結婚の形式、幸せとは何かを問う(「末永い幸せ」)ほか、社会に適応しつつも、常に違和感を抱えて生きる人たちへ贈る全3話。

 

【購入理由】

表題作のあらすじ、タイトルのよさ、装丁のかわいさ、これまで高瀬隼子さんの作品を読んだことがなかったので

 

【感想】

●いい子のあくび

多くの女性がきっと感じたことがあるけど、改めてちゃんと見つめたらつらくなってしまうため普段はあまり深刻には考えないようにしている(少なくとも自分はそう)、「割りに合わなさ」「納得のいかなさ」の正体を主人公の直子の心情や行動を通してとてもはっきりした形で目の前に突きつけられてようで、読んでいる間中ずっと心がざわざわした。

私はいわゆる「ぶつかりおじさん」に遭遇したことがないけど、それでも主人公の直子の気持ちにめちゃくちゃ共感できてしまう。ぶつかりのような目に見える加害だけに限らず、「こっちが譲るのが当然なのか?もし自分が男性でも果たして同じ目に遭っていたのか?」と思わされてしまうようなことは日常生活でしょっちゅう起きてるから。だから、直子の気持ちがわかりすぎていっしょに怒りすぎて、直子の内部の激しい感情に取り込まれてしまうようで、読んでいる最中も読後もかなり怖くなった。男性はこの作品を読んだら一体どんな感想を持つのかな。かなり気になるので身近な男性にかたっぱしから読ませてみるとする。

 

●末永い幸せ

表題作は多くの女性が共感してしまうテーマだけど、こちらは女性でも共感できるひととできないひとが半々のような。(男性で共感するひとは果たしているのか?)

私は主人公と同じ違和感をずっと感じていた。だけど、主人公と同じ行動をとれるほど誠実な人間でも勇気のある人間でもない。自分の心に嘘をついてでも表面的には相手の喜ぶ行動をとることで円滑な人間関係を維持してきたタイプなので、主人公のように相手を多少傷つけたとしてもどこまでも誠実であろうとする人間が本当にまぶしくてうらやましい。

「本当の気持ち」って結局どこまでいっても本人にしかわからないものだよなあ。それがとてももどかしくもあるけど、お互い折り合いをつけながら理解を深め合い関係を構築していくのが他人と生きていくおもしろさなのだろうか。生きるって大変だ。

 

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